全ての人に平等に与えられているもの、それが「1日24時間」という「時間」と言えます。ただし平等に与えられていますが、活かしている人も、殺している人もいるのです。「時間管理術」を学んで、タイムマネジメントを効果的に行うための、フレームワークを解説します。
目次
タイムマネジメントとは
タイムマネジメントって?
タイムマネジメントとは「時間管理」と訳されますが、時間に終われる状態から「自分自身で時間をコントロールする事」を指します。時間は「勝手に流れているもの」と思いがちですが、一流の人たちは、この時間そのものを味方に付けて、上手にコントロールしているのです。
時間に追われている状態ですと、「もうこんな時間」「まだ○○が終わっていない」「納期に間に合わない…」など、毎日のライフスタイルが悪循環になって行きます。
タイムマネジメントは「いま」に集中するスキル
タイムマネジメント=時間管理と伝えましたが、時間を管理する為に必要なことは一言で、「自分のタスクを時間に当てはめるスキル」と言えます。
その為には「タスクを整理するスキル」「優先順位を決めるスキル」「意思決定スキル」「タイムスケジューリングスキル」といった、「スキル」が必要にになります。これらが全て、上手にできる人というのは、「自分で時間をコントロールできる人」と言えます。
ですのでタイムマネジメントができている人は、「いま何をすべきかが明確で、時間に追われていない状態」と言え流のです。思考が「いま」にフォーカスできているということは、それだけ今の生産性が高い人と言えます。

成功者の「時間」に関する捉え方
「時間」に関する金言は、日本でも世界中でも多くの著名人が残しています。幾つかをご紹介します。
本田宗一郎
日本の実業家・技術者・本田技研工業の創業者
時間だけは神様が平等に与えて下さった。これをいかに有効に使うかはその人の才覚であって、うまく利用した人がこの世の中の成功者なんだ。
ヘンリー・フォード
フォード・モーター創業者・米国の実業家
たいていの成功者は他人が時間を浪費している間に先へ進む。これは私が長年、この眼で見てきたことである。
ショーペンハウアー
ドイツの哲学者
普通の人々は時間をつぶすことに心を用い、才能ある人間は時を利用することに心を用いる。
スティーブ・ジョブズ
アップル創業者・米国の実業家
毎日、今日が人生最後の日かもしれない、と考えるとすれば、いつか、必ずその考えが正しい日が来る。
以上のように、各界で成功者と言われる人々も、時間に関して本質的な捉え方をしている事が分かります。

タイムマネジメントができるメリットって?
ストレスフリーの実現
常に「何かに追われている感覚」の方はいないでしょうか。「いつも慌ただしい人」「納期がギリギリな人」「遅刻してしまう人」「周りからせかせかしていると思われている人」、こう行った状態では、一流のビジネスマンとは言えないですよね。
先の項目では、タムマネジメントができるようになれば、「いまに意識を向けられる」とお伝えしました。「時間に追われない」と言う事は、それだけ自分が何かに圧迫されるストレスが減ると言う事です。頭の中で「あれもしなきゃ..これもしなきゃ..」という焦りが「余裕」を奪ってしまうのもですので、この「余裕」を取り戻す為に必要なスキルが「時間管理術」と言えます。
生産性の向上
タイムマネジメントができるようになる事で、「優先順位」に沿って行動をタスク化して行く事ができるようになります。「センターピン理論」を言う考え方はご存知でしょうか。
ボーリングで言う、センターピンを倒せば、続けて後ろも倒れるように、「最もいま何をすべきか」という仕事上のセンターピンを見極める力が身につきます。これは「何をすべきか」以上に、「しなくて良いことは何か」ということを考える事も重要になります。
未来に先手を打てる
「時間に追われている状態」というのは、「目先」の事しか考えられていない状態と言えます。タイムマネジメントができるようになる事で余裕が生まれ、「より良い未来の為には何をすべきか」を考える時間が増えるのです。
1年後の理想の状態・3年後の理想の状態・5年後の理想の状態など、未来を先手で具体的にイメージする事で、「その為には今何をしたら良い」と現在の行動を変えていく事ができます。
周りからの信頼構築
時間に追われている人は、「何からタスクをこなせば良いのか明確になっていない」「そもそもタスクがどれなのか整理しきれていない」などの悩みを抱えているでしょう。時間をコントロールできる事で、「いまのタスク」に余裕を持って取り組む事ができます。
職場やクライアントから与えられた業務のクオリティが低かったり、納期がギリギリであれば一発で信頼を失いかねません。余裕を持って業務を取り組める事で、「また頼もう」とリピートしてくれる可能性高まると言えるでしょう。
周りとの信頼構築のためには「業務の高いクオリティ」「スピードが早い納品」、そして「余裕のあるコミュニケーション」ができる事で、信頼構築にも繋がってくるのが、タイムマネジメントの大きなメリットと考えられます。
時間管理スキルを底上げする3つのフレームワーク
その1:時間管理のマトリクス
優先順位を2つの方向性から考えるフレームワークで、1つが「緊急度」、もう1つが「重要度」です。今目の前にある「タスク」が、4つのどの領域に該当するのかを考える事で、優先順位を決定するスキルが身につきます。ほとんどの場合、「緊急かつ重要」な領域のことがタスクの大部分を占めてしまうかもしれません。

参照:プレジデントオンライン
時間管理が苦手な人は「第1領域→第3領域→第4領域」の順番に、時間を費やしてしまいますが、上手な人は「第1領域→第2領域→第3領域」の順で、時間を効率よく使っているのです。つまりポイントは「第2領域」をいかに、重要な事柄と意識して先手で取り組めるかということです。
上の図でも分かるように、時間を投資した分だけ最もリターンが多いのが「第2領域」だと言えます。「人間関係構築」「将来設計」「勉強」「自己啓発」「自己投資」等に、時間を費やせる事が未来を豊かにしてくれる鍵と言えます。
その2:ハインリッヒの法則
これは「時間管理」とは少し離れる考え方かもしれませんが、この考え方を「タイムマネジメント」に落とし込む事で、格段に「ミス」を避ける事が出来ます。
ハインリッヒの法則とは、米国の技師であるハインリッヒが労働災害の統計から導き出した法則です。1件の重大な事故(死亡・重症)が発生する背景に、29件の軽傷事故があり、さらにその背景には300件のヒヤリ・ハットと言われるインシデントがあると警告をしているのです。

もともとこんハインリッヒは「交通・労働安全」で用いられた統計ですが、「企業」「人」にも十分に置き換えられるものだとされています。例えば、企業で重大なトラブルが1件発生した場合、軽度のクレームが29件、クレームになっていないいわゆる「サイレント・クレーマー」が300件あるという事に置き換えられます。
顧客が口にする「クレーム」の背景には、約10倍のサイレント・クレームが潜んでいると考えられる訳です。そこで、時間管理のマトリクスでも考えられたように、何らかのクレーム(ミス)があった場合「ミスの調査・改善」に先手を打って、時間の優先順位を避けるかが大切になります。
「なぜこのようなミスが起こってしまったのか」「これ以外にも疎かにしている事は無いか」「回避できるミスは無いか」等、事前にアクションが取れれば、第一領域の時間も削減できる可能性が高まります。この法則を時間管理に当てはめて考えられれば、顧客とより良い関係が構築できると言えるでしょう。
その3:「隙間タスク」「じっくりタスク」
目の前にあるタスクを、5分以内であれば「隙間タスク」、15分以上かかるものであれば「じっくりタスク」として振り分ける考え方です。

図でも分かるように、タスクはほとんどの場合「断片的なアクション」「クリエイティブなアクション」と2つの分類ができるでしょう。断片的なアクションは「資料のチェック」「メールの返信」「取引先への電話」等、「やる事」が決まっているタスクです。
対して「クリエイティブなアクション」は、「プレゼン資料作成」「市場調査」「新規事業の構想」「提案方法の立案」「問題点の立案」等、集中して頭を使うタスクは「じっくり」に該当します。このじっくりタスクを例えば「10分×6回」に分けるのは、ナンセンスです。なぜなら毎回思考を戻して、集中し直す手間がかかるからです。同じ60分でも「1時間」の時間を確保して、向き合うべきでしょう。
このように「隙間タスク」「じっくりタスク」のどちらなのかをまず判断して、「じっくりタスク」を先にスケジューリングするようにしましょう。じっくりタスクのスケジューリングは、まずそのじっくりタスクが、どれくらいの時間がかかりそうかを簡単に考えます。2時間であれば、その2時間はいつ確保できるのかを、手帳に書き込んでスケジュールを抑えましょう。
このようにじっくりタスクのスケジューリングを先にしてしまうのがポイントと言えます。
タイムマネジメントを高める6STEPのコツ
上記にフレームワークを踏まえて、実際に時間管理を高める6STEPをお伝えします。
STEP1.未来を思考する
そもそも「目の前のタスクだけで本当に良いのか?」を疑ってみましょう。まずは「未来」を言語化する事がポイントです。
「成し遂げたいこと」「目指すべき目標」を言語化しましょう。到達したい先が「言語化」されていないと、現状のタスクそのものが不明であったり、効果的でない可能性があります。もし目標が「1年後社内営業成績No.1」や「5年後部長へ昇進」などの目標があれば、その為には「何をすべきか」を考えることができます。
STEP2.タスクの洗い出し
「進むべき方向性」が腑に落ちたら、その為に「今何をすべきか」をタスク化します。「1年後社内営業成績No.1」の場合、「新規顧客リスト作成」「既存顧客のフォロー方法の改善」「プレゼンテーション資料の改善」「社内ノウハウの勉強」「競合他社の調査」等、必要な要素がいくつも洗い出しましょう。
STEP3.タスクの細分化
タスクを洗い出しても、具体的な「行動リスト」まで「細分化」しなければ実行は難しいです。「競合他社の調査」であれば、「競合を5社ピックアップする」「競合の概要(営業手法・顧客先の整理)」「SWOT分析を行う」等、さらにタスクが具体化されるでしょう。ここまで細分化すると、その1つのタスクが「どれくらいの時間が掛かるのか」が割り出されるでしょう。

STEP4.タスクの仕分け
タスクが細分化されたらいよいよ実行ですが、その前に一度立ち止まってみましょう。「本当に自分がやるべき仕事」か「人の力を借りられないか」を考えてみましょう。優秀な方ほど、自分の専門領域を理解していて、強みに特化してタスクを行うものです。
もし分析が好きで得意な方がいたら、例えば「分析に関しては○○さんに依頼ができる」とか「資料のデザインは○○さんに依頼しよう」など、明らかに自分が行うと時間も掛かり、クオリティも下がるのであれば、社内・社外など、ご自身の信頼たる方にお願いをするのが賢いタイムマネジメントです。
「人に依頼をできる人」というのは、日頃から信頼されている人に限るでしょう。日頃からの人付き合いも、とても大切なタイムマネジメントの要素と考えられますね。
STEP5.スケジューリング
ここまでタスクが仕分けできたら、スケジューリングして「日付・期限」を決めましょう。「競合を5社ピックアップする」というタスクであれば、ざっくりと「30分」だと時間を見積もったとして、30分であれば「今週の木曜日の15:00〜」と、手帳(スケジュール帳)に書き込んで未来の時間をブロックしましょう。
「スケジュール帳に書き込んで未来をブロックする事」で初めて、未来をコントロールできている状態と言えます。タスクが洗い出されているだけでは、正直何も意味は成しません。時間を見積もっても、急な「第1領域」のタスクが発生する可能性もあります。余裕を持った、時間算出とスケジュール帳の確保が重要になります。
また第三者に力を借りる場合は、「いつまでに(期限)、どのような状態(具体的な内容)」でというように明確な依頼が必要です。相手の時間を借りる訳ですので、慎重に、丁寧に、相手とコミュニケーションを取りましょう。
STEP6.PDCA
PDCAはビジネスの世界では王道のフレームワークですが、時間管理においてもこの考えは切っても切り離せないと言えます。タスクの洗い出し、仕分け、スケジューリングをして、実行まで行ったとしても、「タスクを期限内に終わらせる事ができなかった」「納品のクオリティが低かった」等の、問題が出てくる可能性があります。

参照:AIアナリスト
その場合C(評価)とA(改善アクション)を考える必要があります。「タスクの優先順位のつけ方が曖昧だった」「タスクの時間の算出が曖昧だった」「突発的な第1領域のタスクが多かった」等、何が「原因」だと考えられるのか「仮説」を立てる事が必要になります。
このように改善を繰り返し、「自分なりの時間管理方法」を習得していけば、3ヶ月・半年・1年で大幅に成長が見込めるでしょう。
まとめ
今回はビジネスパーソンに必要な、タイムマネジメントのフレームワークと、具体的な6つのコツをお伝えさせて頂きました。心理学者のダニエル・カーネマンは「人は多くの時間を無駄にしている。誰もが、時間など無限にあるかのように振る舞っているが、実際には時間こそ限りある資源であり、人はそれを上手に活用していない。」と言葉を残しています。
平等に与えられた時間だからこそ、スキルを駆使して人一倍意識を向けられれば、より良い未来を創造できると言えますね。最後までお読み頂きましてありがとうございました。